
【監修者】社会保険労務士 嶋崎豊人
会社を立ち上げてから売上が安定してくると、「法人口座にお金は残るけれど、うまく活用できていない」という感覚を持つ経営者も少なくありません。
「将来へ備えるために資産運用を始めたほうがいいのか?」と感じていても、iDeCoやNISAといった制度が多いため、何を選んだら良いかわからない方もいるのではないでしょうか。
法人化をしている“一人社長”の場合、老後資金を計画的に準備したいときには『企業型DC』がおすすめです。
企業型DCとは、会社が掛金を出して、その掛金を加入者自身が運用する年金制度のことです。
役員1人からでも加入できるプランがあるため、最近では一人社長の加入数も増えつつあります。
本記事では、前半部分で一人社長の企業型DCの加入条件やiDeCoとの比較、後半で導入するメリットや費用の目安・導入手順などを紹介します。
実際に企業型DCを導入した一人社長の声も紹介しますので、法人のお金を「ただ残すのではなく、将来につながる形で活用したい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
関連記事▶︎▶︎企業型確定拠出年金(企業型DC)とは?メリットや導入手順をわかりやすく解説
企業型DCは一人社長でも加入できる

企業型確定拠出年金(企業型DC)は「従業員のための制度」と思われがちですが、一人社長でも加入できます。
ただし、企業型DCの取り扱い機関によっては、システムコスト面から人数制限が設けられているケースも。
加入の際は、役員1人からでも導入できる機関やサポート会社を選ぶのがおすすめです。
一人社長が企業型DCに加入するためには、いくつかの条件をクリアしなければならないため、まずは加入条件を確認しましょう。
加入入条件
企業型DCに加入する前に、以下の条件に当てはまるかチェックしてみてください。
加入条件
- 法人を設立している
- 会社が厚生年金の適用事業所である
- 社長が厚生年金の被保険者である
なお、企業型DCは“将来に備える”ために導入するものです。
現時点で資金繰りが厳しい会社は原状回復に集中するために、企業型DC導入の優先順位をあとに回すほうが良いでしょう。
個人事業主は企業型DCに加入できない
会社(法人)を作らずに個人として事業をしている個人事業主やフリーランスは条件を満たさないため、企業型DCには加入できません。
個人で退職金を確保する場合は、iDeCoや小規模企業共済などを検討してみましょう。
一人社長は企業型DCとiDeCoどちらがいい?上限額を比較

企業型DCかiDeCoか、どちらを始めるべきか迷う方は少なくありません。
ここでは、拠出の上限額と社会保険料負担の観点から2つを比較します。
2026年7月時点では、企業型DCの掛金上限額は月5万5,000円までです。
対して、iDeCoは月2万3,000円までであるため、企業型DCよりは掛金の上限額が少なくなります(企業型DCと併用する場合、iDeCoの上限は月2万円まで)。
ただし、2026年12月に制度改正の内容が適用されたあとは、企業型DCもiDeCoも上限額が月6万2,000円までに引き上げられるため、拠出限度額の差はなくなります(企業型DCとiDeCoの両方を利用する場合、上限額は2つを合算して6万2,000円まで )※。
【※参考】厚生労働省|DC拠出限度額(令和8(2026)年12月~)
企業型DCとiDeCoのどちらに加入するか迷ったときには、拠出の上限額だけでなく、社会保険料負担の視点も含めて検討してみましょう。
iDeCoは、役員報酬を一度受け取ったあとの「個人のお金」から積み立てる制度です。
そのため、所得税や住民税の控除は受けられるものの、社会保険料は算定の対象になります。
一方で、企業型DCは「会社」が掛金を拠出する制度です。
企業型DCの掛金は、はじめから役員報酬とは別で拠出される仕組みのため、原則として社会保険料の算定対象に含まれません。
さらに、企業型DCの掛金や毎月の手数料は全額損金(経費)として計上できるという特徴もあります。
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あいわOfficeは、企業型DCの導入サポートができる社労士事務所です。
社労士であるため、書類の申請だけでなく、企業型DCの導入で必要な就業規則の作成・整備も一括でお任せいただけます。
また、FPやIFAといったお金の専門家による制度説明も行っておりますので、資産運用の不安を解消した状態で制度の導入が可能です。
導入だけでなく、投資教育の継続や運用でお困りの際にはLINEで個別相談の予約を行えるなど、アフターサポートもしっかり行いますので、安心してご相談ください。
一人社長が企業型DCを導入するメリット3つ

ここからは、一人社長が企業型DCを導入するメリットを3つ見てみましょう。
1.法人のお金を活用しながら老後資金を準備できる
通常、iDeCoなどで資産形成を行う場合は、会社から受け取ったあとの役員報酬の中から積み立てをします。
対して、企業型DCであれば会社の資金から直接掛金を出せるため、個人の生活費や現在の貯蓄を取り崩す必要がありません。
2.将来的に福利厚生として活用できる
現在は1人で会社経営をしていても、将来的に従業員を雇う予定がある場合は、企業型DCを福利厚生制度として活用できる可能性があります。
とくに近年では、採用や人材定着の課題解決のために「福利厚生の充実」が重視されており、他社との差別化を図るために企業型DCを導入する会社も増えています。
一人社長のうちから制度を整えておくことで、将来的に従業員を雇った際もスムーズに運用しやすくなるでしょう。
関連記事▶︎▶︎中小企業の福利厚生の現状は?導入しやすい福利厚生や活用事例を紹介
3.自己破産しても原則として差押えられない
企業型DCの運用資産は法律で保護されているため、個人として破産したり会社が倒産したりしても、原則として差押えの対象にはなりません。
万が一に備えて老後資金を安全に確保できる点は、一人社長にとって安心材料になります。
一人社長の企業型DC拠出パターン

ひとり社長が企業型DCを導入する場合、一般的に2つの拠出方法があります。
役員報酬額を“減額して”拠出する
はじめに、役員報酬の一部を企業型DCへ振り替える“減額”のケースを紹介します。
(※設計プランとしては「選択制」を前提としています)
たとえば役員報酬が月60万円の場合、企業型DC上限額の5万5,000円を拠出すると、残りの役員報酬は54万5,000円です。
税金や社会保険料は、企業型DCへの掛金を差し引いたあとの役員報酬額54万5,000円をもとに計算されます。
このときに標準報酬月額の等級が下がった場合は、社会保険料の負担額が減る可能性も。
減額パターンは、役員報酬を見直しながら、社会保険料や税負担に配慮して老後資金を準備したい方に向いている方法です。
関連記事▶︎▶︎企業型DCの選択制とは?生涯設計前払金と掛金の違い、メリット・デメリットを解説
役員報酬額に“上乗せして”拠出する
企業型DCの掛金を役員報酬に“上乗せ”して拠出する場合、掛金は役員報酬とは別枠で会社が負担します。
たとえば役員報酬が月60万円の場合、60万円はそのまま受け取り、「役員報酬とは別に、会社が企業型DCへ掛金を拠出する」という仕組みです。
そのため、社会保険料や所得税・住民税の負担は減額パターンより大きくなることがあります。
上乗せパターンは、役員報酬を維持したまま老後資金を積み立てたい方向けの拠出方法です。
減額パターンでも上乗せパターンでも、会社が拠出した掛金は、原則として全額を損金算入(経費に)できます。
企業型DCの導入費用の目安

企業型DCを取り扱う機関ごとに費用はさまざまですが、今回はSBI証券を参考に見てみましょう。
企業型DCを導入する際は、「初期費用」と「毎月の手数料」がかかります。
初期費用の内訳は主に、「導入一時金」と「口座開設手数料」です(2027年7月時点)。
| 導入一時金(税込) | 口座開設手数料(税込) |
| 11万円 (1事業所あたり) | 3,300円 (加入者1人あたり) |
【参考】SBI証券|運営管理手数料
毎月の手数料は、主に「事業主手数料」や「加入者手数料」「収納代行手数料」などが含まれており、これらは運営管理機関に支払います。
| 事業主手数料(税込) | 加入者手数料(税込) | 収納代行手数料(税込) |
| 1万1,000円 (1事業所あたり) | 440円 (加入者1人あたり) | 330円 (1事業所あたり) |
【参考】SBI証券|運営管理手数料
また、加入者の年金資産を安全に保全・管理するために資産管理機関へ「資産管理手数料 」や「資産管理手数料預託金 」などの支払いも必要です。
- 資産管理機関・・・加入者の年金資産を安全に保全・管理する機関のこと
- 運営管理機関・・・運用商品の選定や案内、加入者への投資教育などを行う「運用関連業務」と、加入者の掛金や運用残高といったデータを管理する「記録関連業務」を行う機関のこと
初期費用や毎月の手数料の金額は、加入する運営管理機関ごとで異なります。
初期費用や毎月の手数料以外にも、必要であれば、従業員への説明会費用や就業規則の整備費用などが発生するケースも。
具体的な費用を知りたい方は、企業型DCの加入前に導入サポートをしている機関や専門家に尋ねてみるのがおすすめです。
企業型DCの導入手順

ここでは、社会保険労務士法人『あいわOffice』で企業型DCを導入する場合の手順を紹介します。
【導入手順】
- 初回無料相談
- 申請書類の作成・申請
- 説明会
- 加入者登録
- 積立・運用開始
- 継続で投資教育
企業型DCの導入が決定したら、以下の書類をご用意いただきます。
【用意する書類】
- 就業規則一式
- 育児介護休業規程
- 保険料納入告知額領収済額通知書のコピー
- 法人の印鑑証明書(発行後2か月以内のもの)
書類がそろい次第、申請の手続きに移ります。
企業型DCをする場合は就業規則が必要であるため、新規作成や修正を依頼したい場合には当事務所で引き受けることも可能です。
申請が終わったら、担当のFP(ファイナンシャルプランナー)やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)といったお金の専門家が、今後の運用について説明をします。
企業型DCを導入したあとも、投資教育やLINEで個別相談の予約ができる体制を整えるなどアフターサポートにも力を入れているので、安心してご相談いただけます。
実際に企業型DCを導入した一人社長の声

今回は、当事務所のサポートを受けて企業型DCを導入されたお客様の声として、一人社長『今福怜子さん』の事例を紹介します。
今福さんは、女性向けキャリアスクール運営やライティング・マーケティング支援を行う『株式会社Mira』の代表です。
今福さんは、学生時代にFPの資格取得をされた経験から、企業型DCについては「会社版の年金制度」という認識があったそうです。
制度に詳しくない状況でも導入を決めたキッカケは、当事務所の代表から「若いうちに会社を設立した今福さんが企業型DCをするなら、今がベストタイミング」と声をかけてもらったことでした。
企業型DCは、原則60歳を過ぎてから運用資産を受け取るため、加入時の年齢が若いほど長期間の積立ができる制度。
当事務所から実際の運用データ結果を見せてもらったときに、今福さん自身の運用のイメージが沸いたことも導入の決め手になったそうです。
そして、導入後に大きなメリットとして感じたのは、掛金や手数料を全額損金計上できる点。
社会保険料に関しても、掛金分が算定対象外になるため、「常に会社経営のことを考える社長にとって助かる」とのことでした。
【まとめ】企業型DCは、一人社長の将来の備えに役立つ制度

企業型DCは、以下の条件を満たしていれば一人社長でも加入できます。
- 法人を設立している
- 会社が厚生年金の適用事業所である
- 社長が厚生年金の被保険者である
実際に企業型DCを導入したひとり社長からは、「掛金や手数料が全額損金計上できるのがよかった」「社会保険料も算定対象外になるのは大きい」といった声が挙がっています。
企業型DCは、長期運用をして資産確保を目指す年金制度です。
加入時の年齢が若いほど長期間の積立ができるため、企業型DCの導入に迷っている方は、少しでも早いうちに取り扱いの金融機関や専門家に相談してみましょう。
一人社長の企業型DC導入 は『あいわOffice』にお任せください
企業型DCは、これまで従業員の数が多い企業がするものと認識されてきましたが、取り扱う機関によっては役員一人からでも加入できます。
あいわOfficeでは、一人社長の企業型DC導入のサポートも行っております。
必要な書類を用意していただければ、申請や手続きなどお任せいただけます。
あいわOfficeは社労士事務所であるため、必要であれば申請のタイミングで就業規則の整備も可能です。
また、不安を抱えたままの導入にならないよう、制度の説明だけでなく、FPやIFAといったお金の専門家が資産運用の説明も行います。
導入後も、投資教育やLINEから個別相談の予約をできる体制を整えるなど、アフターサポートにも力を入れておりますので、安心してご相談ください。

【この記事の監修者】
社会保険労務士法人
あいわOffice代表
嶋崎 豊人
同志社大学卒業後、2015年に行政書士事務所と社会保険労務士事務所を開設。
2020年には、山口県下関市の現事務所にオフィスを移転し、2021年に法人化。2024年には、福岡市博多区に福岡オフィスを開設。
人生100年時代と言われるなかで、中小企業で働くすべての人が「この会社で働いて良かった」と思える組織づくりを目指して、日々奮闘中。
