退職金制度がない会社は違法?制度がない会社のメリット・デメリットや対策を解説【経営者向け】

【記事監修】社会保険労務士 嶋崎豊人

退職金制度を設けていない場合、「退職金制度がない会社は違法なのか?」「このまま制度を設けなくても問題ないのだろうか?」と不安に感じることがあるのではではないでしょうか。

退職金制度の導入は義務付けられているわけではありませんが、近年では、採用や人材定着の面において退職金制度の有無が会社選びの判断材料になることがあります

「何かしらの対策をしないと」と考える一方で、原材料費や仕入れ価格の上昇などにより、新たな人件費を増やすのが難しい会社もあるでしょう。

本記事では、退職金制度がない会社の割合制度を設けないメリットデメリットなどに加え、退職金制度がない会社がこれからできる対策を解説します。

「人件費に新たな予算を捻出するのは難しいけれど、人が離れない対策をしたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

退職金制度がない会社は違法ではない

退職金制度を設けるかどうかは、会社の自由です。

「退職金なし」として制度設計をしている会社は、退職金を支給する義務はありません

ただし、就業規則などで退職金制度を定めている場合には支払いが必要になるので詳しく見てみましょう。

就業規則などで定めている場合には支払いが必要

就業規則や労働協約に退職金の支給条件を定めている場合、退職金は、労働基準法第11条における「賃金」に該当すると考えられています。

そのため、会社は支給条件に従って退職金を支払わなければなりません。

なお、就業規則などに退職金について明確な定めがなくても、これまで継続的に退職金を支給してきた実績がある場合には注意が必要です。

長年にわたって同じような条件で退職金を支給しているなど、「退職金の支払いが会社のルールとして定着している」と判断された場合には、退職金を支払う義務が生じる可能性があります。

退職金制度があっても支給しないケースもある

会社に退職金制度があるからといって、退職する従業員全員に必ず退職金が支給されるとは限りません

退職金の支給条件や金額の算定方法は、会社が定める退職金規程などによって異なります。

退職金が支給されないケース例

  • 勤続年数が支給条件を満たしていない場合
  • 退職金制度の支給対象外となっている場合
  • 重大な規律違反などにより、不支給の条件に該当する場合 など

退職金を受け取るために「勤続3年以上」などの条件を設けている会社では、決められた年数より前に退職すると、退職金が支給されないことがあります。

また、退職金制度の対象を正社員に限定している場合、パートやアルバイト・契約社員などは支給対象とならないことも。

重大な規律違反などを理由に懲戒解雇となった場合は、退職金規程などの定めにもとづいて退職金の全部または一部が支給されないケースもあります。

このように、退職金の支給対象や支給額は、勤続年数や退職理由などによって異なる場合があります。

従業員とのトラブルを防ぐためにも、どのような場合に退職金を支給するのか、あらかじめ退職金規程などに明記しておきましょう。

退職金制度がない会社の割合は10.2%

退職金制度がなくても違法にはならないことがわかりましたが、そもそも退職金制度を設けていない会社はどのくらいの割合であるのでしょうか。

内閣官房の資料によると、退職金制度がない会社の割合は10.2%とわかりました(1,014社中103社)。

従業員規模別に見ると、会社の規模が小さくなるにつれて、退職給付制度がない割合が高くなる傾向があります。

従業員規模退職金給付制度がない割合
50〜99人13.1%
100〜499人9.4%
500〜999人4.5%
1,000人以上2.2%
全体10.2%

【参考】内閣官房|令和6年度民間企業における退職給付制度の状況等に関する調査研究報告書P12を参考に作成

従業員1,000人以上の会社では退職給付制度がない割合は2.2%と少ないですが、100〜499人では9.4%、50〜99人では13.1%と割合は上がっています。

この結果からも、規模の大きな会社では退職給付制度を設けていることが多い一方で、中小規模の会社では退職給付制度を設けていないケースも一定数あることがわかります。

中小企業が退職金制度を設けない理由

会社が退職金制度を設けない大きな理由は、主に2つあります。

  • 従業員の流動性が⾼く、在職期間が短いから
  • ⽉額賃⾦・賞与等に上乗せしているから

従業員規模/制度を設けない理由従業員の流動性が高い・在職期間が短い月額賃金・賞与などに上乗せ定年制がない従業員の実績による賃金体系の中で処遇(年俸制・インセンティブ制度など)
50〜99人44.8%36.2%13.8%8.6%
100〜499人56.4%23.1%7.7%7.7%
500〜999人60%40.0%0%0%
1,000人以上100%100%0%0%
全体50.5%32.0%10.7%7.8%

【参考】内閣官房|令和6年度民間企業における退職給付制度の状況等に関する調査研究報告書P18を参考に作成

内閣官房の調査によると、「従業員の流動性が高く、在職期間が短い」を理由に挙げた会社は50.5%と半数以上、「月額賃金・賞与などに上乗せしている」という会社は32.0%でした。

また、従業員数499人以下の会社の場合は、「定年制がない」「従業員の成果や実績を給与・報酬に反映している」という理由も挙げられています。

このように、退職金制度を設けていない理由は、単に「退職金を支払う余裕がないから」とは限りません。

従業員の働き方や在職期間・賃金体系などを踏まえたうえで、退職金制度を設けていない会社もあります。

会社が退職金制度を設けないメリット

退職金制度を設けない場合、会社にとって大きなメリットとなるのが、退職金にかかる費用や管理の負担を抑えられることです。

退職金制度を設けない会社のメリット

  • 退職金を支給するための資金を準備する必要がない
  • 退職金制度の管理にかかる手間を減らせる
  • 給与や賞与に反映するなど、柔軟な賃金設計がしやすい

先述の同調査では「退職金の資金は自社で準備している」という会社が58%と半数を占めていることがわかっています(※)。

【※参考】内閣官房|令和6年度民間企業における退職給付制度の状況等に関する調査研究報告書P14

自社で資金を用意する場合、将来の支給に備えて計画的な準備が必要です。

従業員数や勤続年数によっては支給額が大きくなることもあるため、会社の資金繰りを考えながらの制度設計が欠かせません。

退職金制度を設けなければ退職金のための資金準備をする必要はなく、その分を毎月の給与や賞与などに反映することもできます。

また、退職金の算定や支給に必要な管理業務が発生しないため、制度運用にかかる人件費の負担を減らせる点もメリットです。

会社が退職金制度を設けないデメリット

退職金制度を設けなければ、退職金を支給するための資金の準備や管理をする必要がありません。

しかし、採用や人材定着の面ではデメリットとなる可能性があります

ここに見出しが入ります

  • 採用活動で他社と比較されたときに不利になる可能性がある
  • 従業員に長く働くメリットを感じてもらいにくい
  • 従業員が将来に不安を感じる可能性がある

求職者が会社を選ぶ際は、給与だけでなく福利厚生や退職金制度の有無も判断材料にしています

同じような労働条件の会社であれば、退職金制度が整っている会社に魅力を感じる人もいるでしょう。

また、退職後の生活を考えるうえで、退職金を将来の資産形成のひとつとして考えている従業員もいます

退職金制度がないことで、長く働き続けることに不安を感じる可能性も。

とはいえ、退職金制度を設けるとなれば、会社としては費用や資金準備についても考えなければなりません。

そのため、「退職金制度を設ける・設けない」の二択で決めるのではなく、会社の負担や経営状況を考慮しながら、自社に合った制度を見つけることが大切です。

下記の記事では、「退職金制度がない中小企業に起こりうるリスク」をデータを交えて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

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退職金制度がない会社がこれからできる対策

人材不足が続くなかで、会社にとって「人材の確保・定着」は重要な経営課題のひとつです。

人材を確保するために、給与の引き上げや福利厚生の充実を図りたいと考える会社もあるでしょう。

しかし、原材料費や仕入れ価格などさまざまなコストが上昇するなかで、新たに人件費を増やすことが難しい会社も少なくありません。

社内で資金を準備して退職時に支給をする場合、従業員の退職時にはまとまった資金が必要なため大きな負担となります。

そこで、退職後の資産形成を支援する制度として新たな対策になるのが『企業型確定拠出年金(企業型DC)』です。

企業型DCとは、会社が掛金を拠出した掛金をもとに、従業員自身が運用商品を選んで老後の資産形成を行う年金制度のこと。

企業型DCにはさまざまな制度設計があり、そのひとつに『選択制』というプランがあります。

選択制は、給与の一部を「そのまま給与として受け取るか」「企業型DCに充てて資産形成をするか」を従業員自身が選べるプランです。

選択制は、現在の給与の一部を企業型DCの掛金に振り替える仕組みであるため、会社は追加の人件費を抑えながら従業員の資産形成を支援できます。

また、企業型DCへ拠出する事業主掛金や手数料は損金算入できるのも企業型DCの特徴です。

「退職金制度を整えたいけれど、新たに大きな負担が増えるのは難しい」という会社にとっても、企業型DCは検討しやすい選択肢のひとつといえるでしょう。

\ あいわOfficeでは企業型DCの申請から導入後のサポートまでお任せいただけます /

当事務所では、企業型DCの申請書類や作成と厚生局への申請手続を行っております。

また、社労士事務所であるため、制度導入に伴う就業規則の整備・変更もお任せいただけます。

さらに、従業員ご自身が運用を安心して行えるよう、FPやIFAといったお金の専門家が説明会を行います。

企業型DCの導入後も投資教育の継続やオンラインで個別相談をできる体制を整えておりますので、気になる方はお気軽にご相談ください。

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【まとめ】退職金制度がない会社は自社に合った制度を検討しましょう

退職金制度は、すべての会社に導入が義務付けられているものではないため、退職金制度がないこと自体が違法になるわけではありません

しかし、退職金制度を設けていると、求職者が会社を選ぶ際の判断材料になったり、従業員の将来への安心感につながったりする可能性があります。

人材の確保・定着を考えるのであれば、「費用がかかるから退職金制度を設けない」と判断するのではなく、会社の経営状況や従業員のニーズを踏まえて、自社に合った制度を検討することが大切です。

企業型DCの導入は『あいわOffice』にお任せいただけます

退職後の資産形成を支援する方法として、企業型DCも選択肢のひとつになります。

制度設計によっては、会社の追加負担を抑えながら導入することも可能です。

あいわOfficeでは、それぞれの会社の状況に合わせた企業型DCの制度設計から申請、従業員説明会の開催や導入後の運用までサポートまで行なっています

「退職金制度を整えたいけれど、どのような方法が自社に合うかわからない」という方は、まずはお気軽にご相談ください。

社会保険労務士法人 あいわOffice代表 嶋崎豊人

【この記事の監修者】

社会保険労務士法人

あいわOffice代表

嶋崎 豊人

同志社大学卒業後、2015年に行政書士事務所と社会保険労務士事務所を開設。

2020年には、山口県下関市の現事務所にオフィスを移転し、2021年に法人化。2024年には、福岡市博多区に福岡オフィスを開設。

人生100年時代と言われるなかで、中小企業で働くすべての人が「この会社で働いて良かった」と思える組織づくりを目指して、日々奮闘中。

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