
【記事監修】社会保険労務士 嶋崎豊人
従業員から「一身上の都合で辞めたいです」と言われたときに、「本当の理由があるのでは?」と感じる経営者もいるのではないでしょうか。
新たに人材を採用しても定着しない場合、採用や教育コストが無駄になるだけでなく、ベテラン社員の負担が増えて、社内の雰囲気が悪くなる可能性もあります。
離職を防ぐためには、従業員が会社を辞める本当の理由を知り、自社に合った対策を考えることが大切です。
本記事では、前半で離職の原因ランキングや若者の離職率を、後半部分で「人材採用・定着に悩む企業が意識したい3つの取り組み」などを解説します。
「従業員が長く働いてくれる会社にしたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
離職の原因ランキング|厚生労働省のデータより

従業員の離職対策をする前に、まずは「何が原因で会社を辞めようと決めたのか」、離職につながる主な原因を知りましょう。
ここでは、厚生労働省の資料をもとに離職を決めた理由を男女別に解説します。
(※定年や契約期間の終了、会社都合・出向などは離職の理由に含んでおりません)
男性の離職原因
| 順位 | 前職を辞めた理由 | 割合(%) | 前年度との比較 (ポイント) |
|---|---|---|---|
| 1 | 個人的理由 | 20.2 | +2.9 |
| 2 | 収入の少なさ | 10.1 | +1.9 |
| 3 | 人間関係が好ましくない | 9.0 | ▲0.1 |
| 4 | 労働条件の悪さ | 8.6 | +0.5 |
| 5 | 会社の将来への不安 | 7.4 | +2.2 |
【参考】厚生労働省|-令和6年雇用動向調査結果の概況-P15を参考に作成
男性の離職理由では、「個人的理由」が20.2%と最も高くなりました。
個人的理由を除いて職場環境や待遇などに関連する離職理由を見ると、とくに多いのが給与への不満となっています。
そのほか、職場での人間関係や勤務時間・休日などの働き方、会社の将来性に対する不安も、離職につながる要因です。
また、前年と比べて「会社の将来への不安」は2.2ポイント、「収入の少なさ」は1.9ポイント増加しています。
この結果から、男性の離職を防ぐためには、給与などの待遇を見直すだけでなく、働きやすい職場環境を整えたり、従業員が将来も安心して働ける環境をつくったりすることが大切だと考えられます。
女性の離職原因
| 順位 | 前職を辞めた理由 | 割合(%) | 前年度との比較 (ポイント) |
|---|---|---|---|
| 1 | 個人的理由 | 24.3 | ▲0.8 |
| 2 | 労働条件の悪さ | 12.8 | +1.7 |
| 3 | 人間関係が好ましくない | 11.7 | ▲1.3 |
| 4 | 収入の少なさ | 8.3 | +1.2 |
| 5 | 会社の将来への不安 | 5.1 | +0.5 |
【参考】厚生労働省|-令和6年雇用動向調査結果の概況-P15を参考に作成
女性の離職理由では、「個人的理由」が24.3%と最も高く、男性の20.2%を上回っています。
個人的理由を除くと、勤務時間や休日などの「労働条件への不満」が12.8%と最も高く、前年から1.7ポイント増加しました。
そのほか、職場での人間関係、給与への不満、会社の将来への不安と続きます。
労働条件への不満が男性よりも高いことから、女性の離職を防ぐためには、給与などの待遇だけでなく、勤務時間や休日を含めた働きやすい環境を整えることも重要だと考えられます。
若者の離職率|就職後1〜3年目を比較

ここからは、厚生労働省のデータをもとに若者の離職率を見比べてみましょう。
下表は、就職後から3年以内の離職率を中卒・高卒・短大卒・大卒と学歴別にわけて表したものです。
| 学歴/離職した年 | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
|---|---|---|---|
| 中卒 | 32.9% | 13.0% | 8.1% |
| 高卒 | 17.9% | 11.5% | 8.5% |
| 短大卒 | 19.3% | 13.7% | 11.5% |
| 大卒 | 12.1% | 11.9% | 9.9% |
【参考】厚生労働省|新規大卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を参考に作成
どの学歴でも、就職後1年目が最も離職率が高くなるという結果が出ています。
ただし、大学卒者にいたっては1〜3年目の離職率は大きく変わらないという特徴があるようです。

近年では、ライフステージや価値観に合わせて働き方やキャリアを選ぶ人が増えています。
とくに若い世代では「定年まで同じ会社で働く」という考え方にとらわれず、より良い待遇や働きやすい環境、自己成長を求めて転職を選ぶケースも少なくありません。
終身雇用を前提とした働き方から、自分に合った環境を選びながらキャリアを築く働き方へと変化しているため、人材採用や定着が課題の会社は何らかの対策が必要です。
人材採用・定着に悩む企業が意識したい3つの取り組み

転職を通してキャリアを築く労働者が増えているなかで、各会社にとって、人材を確保して長く働いてもらうための取り組みは欠かせない経営課題です。
ここでは、人材採用・定着に悩む会社が意識したい3つの取り組みを紹介します。
1.採用活動では多くの情報を開示する
厚生労働省の資料によると、人材採用の募集をかけるときは「できるだけ多くの情報を開示していると、採用後の仕事の満足度や自社での勤続意欲が上がる」という結果が出ています(※)。
募集をかける際は、以下の情報を開示してみましょう。
- 入社直後に求められる経験・スキル
- 配属される部署や業務内容
- 配置転換の範囲(全国転勤・海外異動など)
- 労働環境(残業時間・年間休日数など)
- 入社直後の賃金
- 福利厚生 など
このほかにも「将来得られるスキルや経験」「将来の業務内容やキャリアパスの見通し」「将来の賃金」といった将来性のある情報を開示するのもおすすめです。
【※参考】厚生労働省|人材の確保・定着に成功した企業の取組事例集~採用活動のコツ~P6
2.採用後は面談や研修に力を入れる
採用したあとは、面談や研修を定期的に取り入れましょう。
同資料では「採用者の定着・戦力化のために取り組みをしている会社ほど、採用された人のパフォーマンスが上がる」という結果が出ています(※)。
人間関係の悪化が原因で離職する人も多いため、社内で相談窓口を設けたり職場の同僚や上司とのコミュニケーションをはかる取組みを行ったりして、離職を未然に防ぐ対策が必要です。
【※参考】厚生労働省|人材の確保・定着に成功した企業の取組事例集~採用活動のコツ~P7
3.導入している制度を見直す
離職を考える人のなかには収入や会社の将来性に不安を抱えるケースも多いため、給与や導入制度の見直しも必要です。
しかし、材料の値上がりといった物価上昇が続くなかでの賃上げ対策は容易ではありません。
とくに中小企業の場合は、自社が導入できそうな助成金の活用や福利厚生制度の見直しから検討するのがおすすめです。
中小企業が新たに注目している福利厚生

「従業員が抱える将来性の不安」への対策をしたいときは、企業年金制度のひとつである『企業型確定拠出年金(企業型DC)』導入がおすすめです。
企業型DCとは、会社が掛金を拠出し、その掛金を従業員自身が運用をして資産を確保する年金制度のこと。
下記のグラフにあるように、企業型DCを導入する事業所数は増加傾向にあります。

【参考】厚生労働省|確定拠出年金統計資料(2025年3月末)P5を参考に作成

最近では、退職時にまとまった退職金を支給する制度の代わりとして企業型DCを導入する会社が増えています。
企業型DCにはいくつかの設計プランがあり、『選択制』というプランを採用した場合、掛金は従業員の給与から拠出する仕組みになります。
そのため、従来の退職金制度と違って、会社が新たに掛金を準備する必要がありません。
制度の導入に必要な手数料や掛金は全額損金計上できる点も企業型DCの大きな特徴です。
従業員自身は、掛金を「年金として受け取るか」「給与として受け取るか」のいずれかを選べるため、それぞれのライフステージに合わせた選択ができます。
「賃上げはきついけれど、従業員の将来のことを考えていきたい」という方は、一度企業型DCを検討してみてはいかがでしょうか。
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気になる方は、この機会にお気軽にご相談ください。
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企業型DCの選択制とは?生涯設計前払金と掛金の違い、メリット・デメリットを解説
【まとめ】離職対策には「働き続けたい」と思える環境づくりが大切

離職の理由は、給与や労働条件だけではありません。
人間関係や会社の将来への不安・働き方の価値観の変化など、さまざまな要因が重なって離職につながります。
とくに近年では「転職をしてキャリアを築く」という考えを持つ人が増えています。
人材を採用・定着させるためには、採用時の情報開示や入社後のフォローに加え、従業員が安心して将来を描ける体制を整えることも重要です。
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企業型DCは、従業員の資産形成を支援しながら、会社にとっても福利厚生の充実につながる制度です。
人材採用や定着に課題を感じている場合は、自社に合った制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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「離職率を減らして従業員に長く働いてもらいたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

【この記事の監修者】
社会保険労務士法人
あいわOffice代表
嶋崎 豊人
同志社大学卒業後、2015年に行政書士事務所と社会保険労務士事務所を開設。
2020年には、山口県下関市の現事務所にオフィスを移転し、2021年に法人化。2024年には、福岡市博多区に福岡オフィスを開設。
人生100年時代と言われるなかで、中小企業で働くすべての人が「この会社で働いて良かった」と思える組織づくりを目指して、日々奮闘中。
