中小企業の福利厚生の現状は?導入しやすい福利厚生や活用事例を紹介

中小企業の福利厚生の導入状況を説明する画像

最低賃金の引き上げや物価高が続くなか、「従業員のために何かしたい」と思いながらも、「これ以上コストをかけたら会社がもたないかも…」と悩む中小企業の経営者は少なくありません。

とくに福利厚生に関しては、「充実させたい気持ちはあるが、どこまでやれば良いのか分からない」「他社とズレた判断をしたくない」という不安がつきまとうこともあるでしょう。

しかし実際には、福利厚生は余裕のある会社だけの制度ではなく、人材採用・定着とコスト管理を両立するための経営施策として、多くの中小企業が活用しています。

そこで本記事では、中小企業の福利厚生の現状や、中小企業が導入しやすい福利厚生について詳しく解説します。

「自社に合う福利厚生はないだろうか」と考えたときに、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

中小企業の福利厚生の現状

近年、法律で義務づけられていない「法定外福利厚生」が、多くの企業に注目されているのをご存知でしょうか。

以前は、「福利厚生は余裕のある会社がやるもの」として捉えられる傾向にありましたが、今では「人材の確保」や「従業員の定着」「従業員の意欲向上」の手段になるという認識が高まりつつあります。

帝国データバンクの調査でも、アンケートに回答した中小企業の45.8%が「法定外福利の導入に意欲的」という結果を得られました。(※)

【※参考】帝国データバンク|福利厚生に関する企業の実態調査P2

しかし、福利厚生の必要性は理解しているものの、「コスト面の負担が大きい」という課題に直面し、実際の導入に踏み込めない中小企業も少なくありません。

こうした背景から、中小企業が福利厚生の導入を検討するときは、単に制度を増やすだけでなく、自社の状況に合った仕組みで無理なく続けられる福利厚生設計が大切だとわかります。

企業の法定外福利費の月平均は約4,800円台

厚生労働省の調査によると、常用労働者1人あたりの法定外福利費の月平均は4,882円とわかりました。

「福利厚生=大きなコストがかかる」というイメージを持たれがちですが、実際には1人あたり月5,000円前後が現在の国内企業における平均的な水準といえます。

内訳の平均としては「住宅に関する費用」が2,509円と最も多く、全体の半数以上を占めていました。

次いで「医療・保健に関する費用」「食事に関する費用」などが続きます。

中小企業が導入しやすい福利厚生

中小企業では、運用が複雑でコストのかかる制度よりも、制度設計が比較的シンプルで実務負担の少ない福利厚生が選ばれやすい傾向があります。

実際に、中小企業の導入率が高い法定外福利厚生を見ると、「通勤手当」や「慶弔休暇・慶弔見舞金」「退職金」など、日常的に使いやすく運用しやすい制度が上位に並んでいます。

法定外福利厚生中小企業の導入率(%)
通動手当84.3
慶弔休暇84.2
慶弔見舞金73.7
退職金74
傷病休暇64.5
その他特別休暇52.6
家族手当50.3
帝国データバンク|​​福利厚生に関する企業の実態調査を参考に作成

ここからは、導入率の高い5つの法定外福利厚生を見ていきましょう。

通勤手当

同調査内の約84%の企業が実施している代表的な福利厚生が「通勤手当」です。

通勤手当は、従業員の通勤負担を軽減し、日々の生活を支える仕組みとして広く定着しています。

導入率が高い福利厚生ですが、通勤手当は原則として社会保険の標準報酬月額に含まれるため、支給額が大きい場合は社会保険料が高くなる点に注意しましょう。

あらかじめ、通勤手当の支給範囲や上限額・支給条件などを就業規則や給与規程で明らかにすることが大切です。

なお、従業員が10名を超える企業の場合、就業規則の作成・提出は必須です。

以下の記事で就業規則について詳しく解説しているので、あわせて読んでみてください。

関連記事▶︎▶︎就業規則とは?作成の目的・作成方法・注意点を簡単に解説【社労士監修】

慶弔休暇・慶弔見舞金

「慶弔休暇」や「慶弔見舞金」は、従業員やその家族に不測の事態が生じた際に配慮を示す福利厚生として、多くの企業で導入されています。

結婚や出産・親族の不幸といった人生の節目に対応できる制度であり、従業員の安心感につながりやすい点が魅力的です。

慶弔休暇や慶弔見舞金は法令で義務付けられている制度ではないため、内容や支給条件は会社ごとに異なります。

支給基準があいまいなままだと、不公平感やトラブルにつながる可能性もあるため、就業規則に内容や支給条件などを定めておきましょう。

退職金

「退職金」は、長く勤務した従業員に対する報酬や功労へのねぎらいであると同時に、人材定着や採用力向上にもつながる福利厚生として、多くの企業で採用されています。

中小企業でも導入率は高いものの、会社の規模・業種・資金力・人員構成などによって、支給方法や制度設計は大きく異なります。

退職金制度は複数あるため、会社の実情や将来の負担などを踏まえて、どの制度を導入すべきかを検討しましょう。

主な退職金制度内容
退職一時金制度・会社がまとめてお金を支払う昔ながらの退職金
・会社の将来負担が大きくなりやすいのが特徴
確定給付企業年金(DB)・将来もらえる額があらかじめ決まっている年金
・運用リスクは会社が負うため、制度設計と管理が重要
企業型確定拠出年金(DC)・会社が掛金を積み立て、運用は従業員が行う年金
・ 会社の将来負担が読みやすく、中小企業で導入が増えている
中小企業退職金共済・国の仕組みを使った“外部積立型”の退職金
・手続きが比較的簡単で、税制優遇もある

退職金の仕組み次第で将来のお金の出ていき方が変わり、会社の人件費や資金繰りを圧迫するケースもあるため、短期的なコストだけでなく長期的な視点での設計が大切です。

傷病休暇

傷病休暇は、従業員が安心して働き続けるための配慮として導入されることが多い福利厚生です。

体調不良や傷病の際に休める制度があることで、従業員の不安軽減や職場定着につながりやすくなります。

有給・無給の取り扱いや取得条件は企業ごとに異なるため、年次有給休暇との整理が必要です。

制度設計を誤ると運用面で混乱が生じやすいため、休職期間・賃金の扱い・復職基準などを就業規則で明確にしておきましょう。

家族手当

家族手当は、扶養家族を持つ従業員の生活を支援する目的で設けられることが多い福利厚生です。

中小企業でも比較的導入しやすい制度のひとつとして知られています。

家族手当は導入しやすい利点がある一方で、支給対象となる「家族の範囲」や「金額設定」によって、不公平感が生じるケースもあります。

社会保険や賃金制度との関係も整理が必要なため、導入・見直しの際には制度全体とのバランスを意識しましょう。

賃上げ以外の還元策として注目される福利厚生

最低賃金の引き上げや物価高が続くなか、中小企業では「これ以上の賃上げは難しい」と感じている経営者も多くいます。

ですが、人材の確保や定着の課題解決を考えると、従業員への何らかの還元策は欠かせません。

こうした背景から、賃上げとは異なる形で従業員の将来を支える手段として注目されているのが『企業型確定拠出年金(企業型DC)』です。

企業型DCは、会社が掛金を拠出し、従業員が自ら運用を行う年金制度で、老後の資産形成を支援する福利厚生のひとつとして位置づけられています。

企業型DCの『選択制』という設計プランを選んだ場合、従業員の給料を「年金として積み立てるか」「給料として受け取るか」の選択ができるため、コスト面で会社側が大きな負担を抱える心配がありません

また、企業型DCの場合、将来の給付額が確定していないため、一般的な退職金のように将来の支払義務を抱え続けることがないのも大きな特徴です。

企業型DCの実施事業所数・加入者数は年々増加しており、事業所数はこの数年で大きく伸び、加入者数も860万人を超える規模に達しています

2021年2022年 2023年 2024年2025年
企業型DCの加入者数(単位:人)750万2,164 782万300 805万3,592 830万3,692 862万582

厚生労働省|確定拠出年金統計資料(2025年3月末)P4を参考に作成

社労士法人『あいわOffice』では、企業型DCの導入をサポートしています

企業型DCの導入には、就業規則の整備や申請書類の作成、厚生労働局とのやり取りや従業員への制度説明など、さまざまな手続きが伴います
そのため、「気にはなるけれど、負担が大きそう」と感じて導入をためらう経営者も少なくありません。

あいわOfficeでは、煩雑な手続きや調整をまとめてお引き受けし、スムーズな導入を支援します
「企業型DCに興味はあるけれど、何から始めればよいか分からない」という段階でも構いません。
まずはお気軽にご相談ください。

企業型DCに関しては以下の2記事でも詳しく解説していますので、あわせて読んでみてください。

関連記事▶︎▶︎

企業型確定拠出年金(企業型DC)とは?メリットや導入手順をわかりやすく解説
企業型確定拠出年金の選択制とは?仕組みやメリット・デメリットを解説

福利厚生として『企業型DC』を導入した事例

ここでは、当事務所が企業型DCの導入サポートを担当したお客様の事例を紹介します。

山口県の下関市でリハビリデイサービス事業を展開する『株式会社リハピス』の富村様は、常々「若い従業員のためにできる将来の備えはないか」と考えておられました。

企業型DCに関しては「従業員とって必要不可欠な制度」と知ってはいたものの、書類作成や規程の整備・従業員への制度説明などに負担を感じて導入をためらっていたようです。

そこで、当事務所がまとめてサポートできることをお伝えすると安心され、企業型DCの導入に前向きになってくださいました。

企業型DCの導入後は従業員のモチベーションが上がり、人材の定着にもつながっているそうです。

ほかにも、企業型DCの導入で人材の定着や従業員の投資への意欲が高まった事例があります。

気になる方は、ぜひこちらの導入事例も参考にしてみてください。

▶︎ホームページのお客様の声一覧へ

【まとめ】中小企業の福利厚生は「無理なく続けられる仕組み」から考えましょう

最低賃金の引き上げや物価高が続くなかで、中小企業が人材の採用・定着とコスト管理を両立するためには、自社の実態に合った福利厚生設計が大切です。

すでに多くの中小企業が法定外福利厚生の導入を検討しており、福利厚生は「大企業が行う特別な取り組み」ではなくなっています。

導入を検討する企業数が増える一方で、多くの中小企業がコスト面の不安を抱えているのも事実です。

そのため、福利厚生は次の3つを意識して検討しましょう。

  • 長く続けられる制度であること
  • 運用がシンプルであること
  • 人材定着や従業員満足につながること

「何を導入するか」よりも、まずは自社にとって無理なく続けられる仕組みという視点で福利厚生を見直してみてはいかがでしょうか。

企業型DCの導入サポートなら、あいわOfficeにお任せください

企業型DCは、従業員の将来の安心につながる有効な制度である一方で、導入には就業規則の整備や各種申請・従業員説明など、専門的かつ手間のかかる対応が伴います。

「制度の内容は理解できるけれど、実務が負担で踏み出せない」

「自社に合った設計が分からない」

「トラブルなくスムーズに導入したい」

こうしたお悩みを抱える経営者は少なくありません。

社労士法人あいわOfficeでは、以下のような手間を支援し、導入に伴う負担を最小限に抑えます。

  • 就業規則・規程の整備
  • 申請書類の作成
  • 厚生労働局とのやり取り
  • 従業員向けの説明サポート など

「企業型DCに興味はあるけれど、何から始めればよいか分からない」という段階でも構いません。

まずは現状の人事制度や課題をお聞かせください。

貴社に合った最適な制度設計と導入プロセスをご提案し、安心してスタートできるよう伴走いたします。

社会保険労務士法人 あいわOffice代表 嶋崎豊人

【この記事の監修者】

社会保険労務士法人

あいわOffice代表

嶋崎 豊人

同志社大学卒業後、2015年に行政書士事務所と社会保険労務士事務所を開設。

2020年には、山口県下関市の現事務所にオフィスを移転し、2021年に法人化。2024年には、福岡市博多区に福岡オフィスを開設。

人生100年時代と言われるなかで、中小企業で働くすべての人が「この会社で働いて良かった」と思える組織づくりを目指して、日々奮闘中。

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